成年後見制度の見直しに向けた検討状況について ~法制審議会民法(成年後見等関係)部会における議論から~

 

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報告者:副会長 山内将矢

病気や障害などにより判断能力が不十分な方を法律面から支援する成年後見制度がありますが、目下、制度の見直しに向けた議論が様々なところで行われています 。今回は、法制審議会民法(成年後見等関係)部会における議論の中から、特に利用者の視点から重要な論点となっている「法定後見の終了」の問題について、現場の視点を交えてご紹介します 。

現行制度のシンプルなロジックと現場の不満

現行の成年後見制度(後見、保佐、補助の法定後見3類型。なお、この類型自体についても見直しが議論されています 。)の考え方はシンプルです

「判断能力が欠けているので申立てにより後見等を開始する 、とすれば反対に、終了するのは判断能力を回復した時(若しくは本人が死亡した時)だ 。」

理論的には筋が通っていますが、制度利用の現場からは不満が出ています

なぜ不満が出るのか?

  • 課題解決後も終わらない: 当事者(本人及び親族その他支援者)は、何らかの解決したい課題があって成年後見制度を利用するのが通常です 。
  • 制限と負担の継続: 課題解決後は制度利用を終了したいと考えている場合もあるのですが 、現行制度では本人が死亡するまで後見等が終わらず、一定の制限や負担が続くことになるからです 。

法制審議会で議論される改正案(中間試案より)

こうした現場の課題を受け、法定後見の終了の在り方についても改正案が議論されています 。難しいのは、当初の課題が解決したからと言って、必ずしも本人の支援の必要性が消滅したとは限らないという点です

令和7年6月に取りまとめられた中間試案においては、主に以下の2点について複数の案が提示されました 。

1. 法定後見の終了要件の見直し

法定後見の終了要件】の点につき、以下の案が提示されています 。

  • 法定後見の開始において本人保護の必要性を要件とし 、保護の必要性が無くなったときに(判断能力が回復していなくても)法定後見を終了する案 。

2. 法定後見に関する期間の設定

法定後見に関する期間】につき、以下の案が提示されています 。

  • 甲案: 期間を設けない 。
  • 乙1案: 家庭裁判所が法定後見に期間を定めて更新がない限り期間満了で終了する 。
  • 乙2案: 法定後見の要件の存在を定期報告で確認し、要件が無くなれば終了する 。

制度終了後の「生活」を支える体制整備が不可欠

いずれにせよ、本人が判断能力を回復していなくても法定後見が終了する可能性があることになりますが 、その場合でも本人の生活が成り立つような別の形の支援を受けられることが不可欠です

  • 本人が家族と同居して無事に生活している場合であれば問題無いでしょう 。
  • 独り暮らしの場合はどうか、簡単には終了できないケースもあることでしょう 。

法定後見の終了は、福祉面の体制整備と一体的に考えなければならない所以です 。

地域での支援体制の強化

現在、「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(成年後見制度の利用の促進に関する法律)に基づき 、国、地方自治体、関係団体等で、以下のための策が検討され、進められています

  • 総合的な権利擁護支援策の充実
  • 地域連携ネットワークづくり

全国どの地域においても支援を受けられるような体制が整うよう、後見業務に携わる我々も様々な形で協力していきたいと思います