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報告者:会長(兼浜松支部長) 中里功
浜松市からの連絡
昨年の暮れに浜松市の資産税課より「令和8年1月から評価通知書の交付を廃止することになった」との通知があり、この件で浜松支部執行部に対する経過説明の場が設けられました。
説明事項の概要
- 総務省所管の「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年9月1日施行)」に基づき、令和8年3月末日までに標準化の実施を終えた自治体には一定の補助金が交付される
- 「標準化」されるシステムには、地方自治法に基づき固定資産税額を法務局へ電子通知する機能は有しているが、これを紙で法務局以外に交付する機能は搭載されていない ➡ 評価通知書は交付できない
歴史的経緯
地方税法第422条の3では、市町村長が登記所に対し、不動産の基準年度の評価額を通知する必要があることが規定されていますが、かつての書面で管理をしていた時代、すべての土地建物の評価額を法務局に対し一括通知することの事務量は膨大なものとなるため、昭和42年8月1日に登録免許税法が施行されるにあたり、市町村と登記所の事務軽減を図るため、登記申請に必要な土地建物に係る評価額に限り、その都度、市町村の窓口で評価通知書を発行する運用が開始されました(昭和42年6月26日民三第676号)。
しかし、データの電子管理が進む時代背景を受け、平成18年3月31日民事局事務連絡により「評価通知書発行の運用は電子化の整備をもって取りやめるように!」との方針が示されました。以後、評価額の電子データを登記所へ一括して送付する環境が整った自治体は、評価通知書の発行を廃止するようになったようです。
静岡県内、特に西部地区は現在も発行される市町ばかりですが、県外では評価通知書の制度がないところも少なくないようです。
標準化に向けた自治体の動き
以上のような歴史的経緯の下で、標準化システムに評価通知書の発行機能が搭載されないこと自体はむしろ自然なことでしょうが、司法書士実務にとってはおよそ看過できない運用変更であり、何らかの善後策を探らなければなりません。少なくとも実務がソフトランディングするための激変緩和措置が講じられて然るべきだと考えますが、浜松市との協議は暖簾に腕押しの感が否めません。
なお、今年に入り磐田市からも同様の申し出を受けておりますが、こちらは激変緩和措置が必要である事情を十分に汲んでくれており、現在、落としどころを模索している最中です。
冒頭のとおり、全国一斉の標準化事業とのことですから、今後、同様の動きは他の自治体でも明るみになるのではないかと懸念しています。むしろ浜松市や磐田市は、早期に情報提供をいただいたという点では評価に値するともいえます。
今後の対応
私たちの実務に多大な影響が見込まれる事象に対し、浜松支部執行部では法務局の協力も得ながら引き続き関係自治体との協議を続けてまいります。他地区における動きについても、各支部を通じて情報収集に努めてみてはいかがでしょうか。
本件、動きがあればまたお知らせします。取り急ぎ、現状のご報告まで。