【衆議院法務委員会レポート】参考人招致~小澤日司連会長の意見陳述・質疑応答まとめ~②

前回の記事(意見陳述要旨)に続き、本記事では各委員(国会議員)と小澤日司連会長との質疑応答の要旨を紹介する。

今回の委員会では、成年後見制度の見直しにとどまらず、同じ「民法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれている新たな遺言制度(保管証書遺言)についても質問が及んだ。

小澤会長は、現場の司法書士が肌で感じている課題感や実務上の実態を交えながら答弁し、また、今後想定される対応についても言及した。

国会において、本改正に対しどのような期待と課題意識が持たれているのか。法改正の背景にある空気を読み解くためにも、ぜひ目を通してみてほしい。

※以下、アンサーは全て小澤会長による。

1.阿部弘樹理事(自民)

Q.新しい遺言制度(保管証書遺言など)ができる意義は何か。

A.これまで自筆証書遺言が担ってきた、真正性や真意性の確保をデジタル社会でどのように確保するかが課題であったと承知をしている。遺言書保管官の確認、そして全文口述、適切な保管などを通じた真意性の補強というデジタル社会での課題を受け止めたものと理解をしている。

今般の保管証書遺言は、遺言書保管官による形式不備にかかるチェックがあり、また法務局で保管されることになるため、無効になるリスクや発見可能性の低下を避けることができる。結果、遺言者の最終意思を実現することが可能となり、ひいては所有者不明土地問題の解消にも資するものと考えている。

2.有田芳生委員(中道)

Q.なぜ今回の改正が画期的と言えるのか。

A.これまでの後見制度については、一旦後見人が選任されると制度利用がその方の判断能力が回復するまで終わらないという問題、権限が広すぎる問題、後見人がいったん就任されると相性が合わない場合であっても変えられないという問題が指摘されてきた。この3点の問題については今回の改正でクリアになり、後見制度はとても利用しやすくなると考えているし、国連の権利条約との理念にも即した制度になると思われる。申し立てに関わる専門職の立場から見ても、申立の目的となった事務が終了しても、制度利用が終了できないことによって、後見制度の利用自体を躊躇されることが多く、遺産分割で不動産売却などを妨げるという事例がたくさんあったが、これらが解決していくというように考えている。

3.金村龍那委員(維新)

Q1.なぜ専門職が成年後見人に選ばれる割合がこれほど高いのか。

A1.頼れる親族がいない方(本人申し立てや市区町村長申し立て)が多くなっている印象。また、申立等に親族が関与していても後見人への就任は望まないケースもある。かつては親族後見人が多数だったが、親族による不適切な財産管理や不正事案が見られるようになり、次第に専門職が選ばれるようになったと承知している。

Q2.親族に相談もなく、面会にも来ないような後見人は交代すべきではないか。

A2.まったく面会をしない、つまり、本人の意思を軽視しているようなことは、後見人として望ましくないということは、今回の法制審議会部会でも指摘があったし、私もそのような方はふさわしくないと思っている。一方で、親族の意見については、もちろん本人の意思をきちんと知るための一つの要素として重要なものではあるものの、本人ではなく、親族自身の利益を考えていることもないわけではなく、そのような事案において親族の意思を優先するというのは、本人の代理人である後見人としては、必ずしも適切ではないと考える。

Q3.今回の法律案では、法定後見が開始されても任意後見が終了しないこととされているが、どのような意義があるか。

A3.現在は、やむを得ない事情で法定後見を開始すると本人の意思で結んだ任意後見が終了してしまう不具合がある。併存が可能になれば、実務現場では、契約時に締結した代理権が不足していた場合(例えば想定外の相続や不動産売却など)でも、その部分のみ法定後見を利用し、任意後見を生かし続けることができるため、非常に重要な制度になる。

Q4.今回新たに創設される保管証書遺言は、確実に遺言者本人の最終意思を確認し、遺言者の死亡後にその内容を実現することができる仕組みとなっているか。また、この保管証書遺言の創設によって、いわゆる所有者不明土地問題が解決に至る、そのきっかけになるのか。

A4.(指摘に対する回答は)イエス。本人が元気なうちに遺言作成をしていただくことが円滑な相続登記に資することは間違いなく、結果的に空き家・所有者不明土地問題の解決に大きく資するものになる。

4.井戸まさえ委員(国民)

Q1.周知を図るために何をしたらよいのか。裁判所への年1回の定期報告の際に、新制度への移行や現行制度の継続について本人と話し合ったかを含めるのはどうか。

A1.司法書士会においては研修を十分に行って、その司法書士が各地域の中核機関や自治体と連携し、講演などにより利用者や関係者さらには市民の皆様に知っていただくということを考えている。本や雑誌、インターネット動画の活用も考えられる。裁判所の報告のタイミングのご提案に関しては、効果的で効率の良いものと考えているので参考にしたい。

Q2.相談ニーズが増加すると思うがどう考えているか。地域の専門職や福祉関係者との連携はどう重要になるか。

A2.利用をためらっていた方や、終了できるなら使いたいという方からの相談需要は確実に増える。司法書士会(リーガルサポート)としても相談体制を強化するとともに、市民にとって一番敷居が低い自治体の窓口や福祉関係者との連携をこれまで以上に強化していく必要がある。

5.鈴木美香委員(参政)

Q1.今後「補助」に一本化される中、名前や仕組みを変えても、現場ではこれまでの成年後見に近い運用が続くことが今後も考えられる(特定補助が中心となっていく)。現場の対応等大変になると思うが、その辺どのように考えているか。

A1.特定補助は、改正案の第9条第2項の全ての行為について取消権を付与する必要性がなければ利用することができない。この全ての取消権が必要な事案というのは、司法書士の実務上の感覚では想定することが困難であり、そうすると、この特定補助の利用に適した事案というのはさほどないのかなと考えている。特定補助は今の後見類型とは異なる制度であり、特定補助という制度をきっちりと専門家が周知をすることにより、誤解を解消し、適した事案について利用をするようにしていくことが必要。

Q2.報酬額について。付加報酬も含め、支払う側(本人・親族)の負担感と、専門職側との間にギャップがあるのではないか。

A2.本人や親族からは高額だという意見がある一方、専門職からは負っている責任や業務に比べて安すぎるという意見もあり、認識の差が大きい。今回の改正案では、報酬の考慮要素に「補助の事務の内容を考慮する」ことが明文化されたため、ご本人や親族の期待(事務内容に見合った報酬)に沿える内容になっていると承知している。

法務委員会における質疑の詳細は

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56256&media_type=

を参照されたい。

(衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリ 2026年5月20日(水) 法務委員会13時~)

【編集後記】

全国へ生中継されるという計り知れない重圧の中、小澤会長はどのような質問に対しても淀むことなく、整然と発言をされていた。時折、表情が引き締まる場面も見受けられ、こちらにまで緊張感が伝わる内容であった。 司法書士界を代表してこの大舞台に立たれた小澤会長、そして、的確かつ即座の対応を裏で支えたであろうバックアップチームの皆様に対し、一人の司法書士として心からの敬意を表したい。