【参議院法務委員会】民法等の一部を改正する法律案及び民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議

令和8年6月17日に開催された参議院本会議において、民法等の一部を改正する法律案(成年後見制度、遺言制度の見直し)が可決・成立した。

同月16日に開催された参議院法務委員会では、全部で20の附帯決議が採択された。以下、紹介する。(①~⑱が成年後見制度に関するもの、⑲、⑳が遺言制度関連である)

参照:参議院ホームページ

民法等の一部を改正する法律案及び民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議

政府及び最高裁判所は、両法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

① 家庭裁判所による補助人の選任に当たり、本人の意見が重要な考慮要素であること及び補助人の本人に対する意向把握義務・意向尊重義務が明文化された趣旨に鑑み、本人意向を最大限尊重し、その利益の最大化に資するよう、家庭裁判所による適切な情報収集に向けた必要な研修その他の取組に努めるとともに必要な体制整備を図り、また、補助人と親族その他日常的に本人を支援する福祉関係者等との適切な連携が確保されるよう、関係機関に対する周知及び運用の徹底を図ること。

② 成年後見制度の利用終了後においても、判断能力が不十分な者が地域において必要な支援を継続して受けることができるよう、高齢者福祉、障害者福祉及び金融包摂の観点から、第二種社会福祉事業による支援を含む権利擁護支援施策の充実及び関係機関の連携強化を図ること。また、市町村において権利擁護支援の中核的役割を担う中核機関について、全市町村での設置及び十分な相談機能の発揮に努めること。

③ 家庭裁判所が市町村長その他適当な者に対して意見を求めることができる仕組みが設けられる趣旨に鑑み、中核機関をはじめ福祉関係者から意見聴取することなどを通じて、本人が地域において適切な支援を受けることに結びつくよう、適切な制度周知や研修その他の必要な取組に努めること。

④ 成年後見制度に係る事件の審理及び補助人等の監督が適切に行われるよう、裁判官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の必要な人的体制の整備、専門性の向上のための研修等の体制整備を行うこと。

⑤ 新たな解任事由の創設を踏まえ、専門職後見人による支援の必要性が低下した場合には、親族後見人や市民後見人等への適切な引継ぎを含め、本人の状況に応じた適切な役割分担が図られるよう制度の周知及び環境整備に努めること。 また、成年後見制度利用者の多様なニーズに対応するため、市民後見人の確保及び育成に向け、研修の充実、相談・支援体制の整備その他必要な施策を推進すること。

⑥ 補助人等の報酬について、補助人等が行った事務の内容等が報酬の考慮要素であることが規定上明確化されることに鑑み、報酬の額に事務の内容及び負担の実態を適切に反映し、利用者と補助人等の双方に過度な負担を生じさせることがないよう、裁判官等の裁判所職員に対する研修その他必要な取組に努めること。

⑦ 居住する地域や資力の有無にかかわらず成年後見制度を利用することができるよう、成年後見制度の利用に係る申立費用及び報酬に対する助成について、各市町村の要望を聴取しつつ必要な措置をとること。

⑧ 改正後の法定後見制度の運用に当たっては、障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨を踏まえ、本人の自己決定権を最大限尊重し、ノーマライゼーションの理念が十分に反映され、特に、特定補助人を付する制度については、真に必要な場合に限り適切に利用され、障害者の権利を不当に制約することのないよう、制度の周知・広報及び関係者への研修を充実させるとともに、その利用状況について不断の検証を行うこと。

⑨ 家庭裁判所による特定補助人の選任に係る「必要があると認めるとき」の要件については、その判断の予見可能性及び適正性を確保するため、要件該当性の判断に当たり考慮すべき事項及び判断基準の明確化を図る観点から、特に、本人があらかじめ特定補助人の選任を望まない意向を示していた場合その他本人の意向を把握することができる場合には、その意向を適切に考慮するなど、国会審議において示された考え方を踏まえた適切な制度利用がなされるよう、政府及び最高裁判所においてその周知等必要な取組に努めること。

⑩ 補助人等による不正の未然防止及び早期発見並びに被害発生時の適切な対応が実効的に行われるよう、家庭裁判所による監督に関し研修その他必要な取組に努めるとともに、専門職団体による内部監査その他の自主的な不正防止の取組との連携強化に努めること。

⑪ 任意後見制度の利用が低調である要因について実態を把握し分析するとともに、精神上の理由により将来の財産管理や身上保護に不安を感じる様々な立場にある者が、任意後見制度を積極的に活用し、本人の意思を尊重した生活を営むことが可能となるよう、利用のための相談体制の充実、任意後見監督人の候補者に関する情報の提供の在り方を検討し、更なる改善に努めるとともに、両法による改正の趣旨も含めた任意後見制度の一層の周知・広報などを通じて、利用の促進を図ること。

⑫ 成年後見制度の利用の前又は利用と同時に備えることのできる財産の管理・承継のための将来設計として、高齢者、障害者等の生活を支援する福祉型信託を利用することが有効な手段であることに鑑み、国民がその機能、役割等を理解し、利用するためのあらゆる環境整備を進めることについて検討すること。

⑬ 任意後見制度の適正な利用の促進及び身寄りのない高齢者等の問題に関して、高齢者等終身サポート事業における預託金等の管理業務の信頼性を確保する観点から、信託会社、信託銀行等と高齢者等終身サポート事業との連携の在り方について検討するとともに、適正な事業運営を確保し、利用者が安心して利用できるよう努めること。

⑭ 成年後見人の包括的取消権の廃止に伴う消費者被害の拡大を防止するため、高齢の消費者や障害のある消費者の保護の強化などについて検討を行い、知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合などの対応について、法制上の措置も含めた検討を進め、必要な措置を講ずること。

⑮ 両法施行後の成年後見制度の円滑な運用及び利用の促進のため、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づき、その運用状況について公表するとともに、制度利用の申立てが適切に行われるよう、民法等の一部を改正する法律附則第十条を踏まえ不断に検証し、その支援をするための方策について検討を行い、必要に応じて、その結果に基づき所要の措置を講ずること。

⑯ 現行の成年後見制度でも、家庭裁判所の審判に対する不服申立てにおいて親族側の意見が採用されていないこと等が指摘されていること等を踏まえ、民法等の一部を改正する法律の施行から三年後の検討が実証的なものとなるよう、速やかに成年後見制度の利用者及びその親族から意見を聴取するなど必要な調査を行うこと。

⑰ 民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律により「成年被後見人」を「特定補助人を付する処分の審判を受けた者」に置き換える等の改正がされた各法律について、今後個別にその改正を検討する際に、成年後見制度において「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」との認定がされたことをもって当該法律に規定する制度において「特定補助人」又は「特定補助人を付する処分の審判を受けた者」に一定の地位を付与することの当否についても検討を行い、必要な措置を講じること。

⑱ 次期成年後見制度利用促進基本計画の策定に当たっては、両法の趣旨及び国会における議論を十分に踏まえ、改正後の制度が適正かつ円滑に運用されるよう検討すること。

⑲ 新設される保管証書遺言を含む各種の遺言制度が円滑に運用されるよう、関係機関と連携し、遺言の作成を希望する者が適切な遺言制度を選択するために必要な情報提供その他の遺言制度の利用促進に関する取組を推進すること。

⑳ 新設される保管証書遺言の信頼を高めるため、法務局の人的・物的体制の充実を図るとともに、保管証書遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の業務の適正な遂行及び利便性向上のため体制の整備等、必要な措置を講ずること。 また、本制度の創設により、法務局において電子保管証書遺言書の保管等を行うことなどに鑑み、個人情報の保護の観点から、情報セキュリティ対策を着実に行うこと。

【衆議院法務委員会】民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議